- “常識的に考えて”
- “フツーはそうでしょ”
- “みんなそう言ってる”
あなたはこんな表現をしたことはありませんか?
こういう言い回しって、「そうに決まっている」ときに使う言葉ですよね。でも、実際はこんなにアテにならないコトってないんじゃないでしょうか。
たとえば、「自分の常識は他人の非常識」なんて表現がある通り、「常識」なんて本当に人それぞれなワケです。だって、そもそも価値観が違うんですから。
ところで、価値観ってどのように出来上がるかご存知ですか?
正解は、小さい頃に親から教え込まれたり、痛い思いをして自ら学んだり、本を読んで吸収したり、学校やコミュニティで教わったり……。
つまり、それこそ人の数だけ価値観の種類があるってことなのです。
だから、たとえば「離婚の原因はお互いの価値観の違い」なんて話は、ほとんど「離婚の原因はお互いの指紋の違い」とか言っているのと一緒なんですよ(苦笑)
とはいえ、自分が信じて疑わない価値観と真逆のものを、目の前で四六時中見せられるというのは結構なストレスになることも少なくないですよね。
なんだか自分の信じているもの、もっと言えば自分自身を否定されているような寂しい気分でしんどくなったりイライラしたりして、怒りたくなるのもわかります。
そこで、たとえ価値観を一緒にすることはできなくても、上手な乗り越え方や付き合い方を身につけることで、お互いのギャップを埋めていくことをご提案します。
「みんなが違っている」という事実を受け入れることが前提ですが、歩み寄れることと譲れないことをはっきりさせた上で、相手にうまく伝えることができれば、あなたの日常をフワッと軽やかにすることができますよ。
今回のQ&Aはそんなテーマのお話です。もちろん恋愛以外にも有効ですので、グイグイ使い倒してみてくださいね。
【相談者:20代女性】
私には付き合って4か月になる彼がいます。彼はとても優しいし性格も合っていると思います。でも、私が話しているのにスマホをいじったり約束の時間に平気で遅刻したりするので、ついキレてしまいます。
一応謝ってはくれるのですが、なんでそんなに怒っているのかわからないというような表情をしています。しまいには文句を言っている最中にその辺のものをいじりだすので余計キレます(苦笑)
彼が私のことを大切に思ってくれているという実感はあるのですが、「人としてどうよ?」というような態度をどうして平気で取るのかわかりません。
それともこんなことでキレてしまう私の器が小さいのでしょうか。ご意見をお聞かせください。
A. 不満を我慢する必要はないので、ポイントを押さえて伝えましょう
日常の迷宮脱出ガイド、心理分析士の咲坂好宥です。
彼の態度がダメ過ぎなのか、あなたが怒り過ぎなのか……。なかなか簡単には決めかねる問題です。というより、これはどっちがどうという問題でもない気がします。
それよりも、あなたの怒りの意味が何なのか、そして彼との違いについてよく理解することのほうがこれからの2人にとって有益のような気がします。
そこで、これらのことについて順を追ってご説明していきますね。
怒りの本質的役割は、攻撃ではなく防御なのです
あなたは彼の態度になぜキレてしまうのでしょうか。それにはまず、怒りというものを掘り下げてみたほうがよさそうです。
心理学者の湯川進太郎さんは著書『怒りの心理学―怒りとうまくつきあうための理論と方法』(2008年、有斐閣)の中で、怒りを次のように解説されています。
怒りとは「自己もしくは社会への、不当なもしくは故意による(と認知される)、物理的もしくは心理的な侵害に対する、自己防衛もしくは社会維持のために喚起された、心身の準備状態」である。
ちょっと“もしくは”が多めですが(笑)、まー要するに、不当な扱いを受けてココロがダメージを受けることに対する防衛反応だってことです。
“キレる”という言葉を使うと、なんだか“怒り=攻撃”というような印象さえ受けますよね。でも、それはむしろ逆で自己防衛なんですね。
では、一体どんなダメージに対する自己防衛なのでしょう。あなたは彼に平気で遅刻をされたり話している最中にスマホをいじられたり、文句を言っているのにその辺のものをいじり出したりされましたね。
そのとき、「不当に扱われた」「軽く見られた」「バカにされた」というような気持ちを抱きませんでしたか? それは、あなたの価値を低められて自尊心を踏みにじられた、というような感覚ではないでしょうか。
そのような扱いを受ければ“さみしい”し“悲しい”ですよね。でも、これらの感情を味わうのはつらすぎます。だから、さみしいとか悲しいとか感じる前に、怒りというアイテムでフタをしてしまうのです。
少なくとも怒っているあいだは、他の余計な(?)感情を味わわなくて済むからです。こう考えると、怒りってものすごい自己防衛システムですよね。
“常識的に考えて”とか“フツーは”という概念は実在しません
では、なぜ彼はそんな風にあなたを怒らせる振る舞いをするのでしょうか。お話を伺う限り、彼はあなたに悪意を持って接しているのではなさそうですよね。
この謎を解く鍵が、ご相談文にあったあなたの「人としてどうよ?」というフレーズです。
あなたは彼の振る舞いを“人として”ナシでしょ、とお感じになったわけですね。別の言い方をすれば、“常識的に考えて”とか“フツーは”みたいな感じでしょうか。
ところが、これが大きな罠なんです。外国ならもちろんのこと、この日本で同じように暮らしていてさえも、あなたと彼の価値観はまったく別のものです。共通する部分はごく一部だと考えたほうが正しいのです。
ぼくらは多くの場合、親の価値観をそのまま引き継ぎます。
たとえば、あなたの親御さんが「時間に遅れることは他人に対して失礼だ」という価値観をお持ちだとすれば、お子さんであるあなたに対して遅刻しないようにしつけますよね。
これに対して、もしも彼の親御さんが「人は時間に制約されることなく自由に生きるべきだ」という価値観をお持ちだとしたら、きっとそのようにお子さんを教育するのではないでしょうか。
ちょっと極端な対比でお話しちゃいましたが、そんなことの積み重ねで人の価値観は千差万別になるわけです。
そう考えると、もしかしたら彼には全然悪意がないのかもしれません。そして、あなたがなぜそんなにキレているのか、実は全然わかっていない可能性だってあるのです。
不満を我慢せずに相手に伝えるコツ
では、価値観が違うのだからキレずに我慢しなければならないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。
ただ、攻撃的に接しても彼には効果がなさそうですから、少し伝え方を工夫してみましょう。たとえば、こんな点に注意してみてください。
(1)NGなことはハッキリ伝える
たとえば、話しているときにスマホをいじられるのがイヤなら、まずはそれをハッキリ伝えましょう。
その指摘をせずにただ不機嫌になる人もいますが、そもそも価値観が違うのですから不機嫌さを示しても問題が解決する確率はほぼゼロでしょう。「察してよ!」という態度からは何も生まれない、ということです。
このとき、“常識的に考えて”とか“フツーは”とか“人として”とかいうフレーズは使わないようにしてください。
「それが当然でしょ」という姿勢は反発を生みやすくなります。「あなたはどうかわからないけれど、私はそうだ」というスタンスで。
それから、ご自分が嫌なことを禁止するのではなく、ご自分がしてほしい態度を伝えるようにしましょう 。「スマホいじらないで」ではなく、「話しているときは他に何かするのをやめて聞いてほしい」というように伝えるのです。
(2)事実や状況の話だけではなく、感情を伝える
「なんで遅刻するのよ!」「話をしているときはスマホをいじらないで!」というような指摘だけでは、あなたがどんな気持ちなのかが伝わってきません。
そうされてどんな気持ちになったのかを伝えましょう。「軽く見られたみたいでとても悲しくなった 」というように。これがあるだけで、彼はあなたが何に怒っているのか理解しやすくなりますよ。
(3)どうしてもムカついてしょうがないときは、紙に書く
そうは言ってもムカついた思いを相手にぶつけてしまうこともあるでしょう。それはそれでしょうがないですね。でも、なるべくなら違う方法で発散してみませんか。
オススメなのは紙に書き出す方法。怒りをためこんで我慢し続けると体に変調をきたすこともありますから、思いっきり発散しましょう。
ここではどんなに口汚くののしってもOKです(笑) 気が済むまで書きなぐったら、紙をグシャグシャに丸めて捨てちゃいましょう。気分がスッキリしますよ。
ということで、我慢せずに相手に伝えるコツをご紹介しました。上手に活用してお互いの理解を深めていってくださいね。お二人がますます仲良くなれますように!
【参考文献】
・『怒りの心理学―怒りとうまくつきあうための理論と方法』(湯川進太郎・著、有斐閣)
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今日も最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。
咲坂好宥
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